能登半島は「海の発酵文化の宝庫」。ここでは、魚醤「いしる」や米飴、魚料理に寄り添う味噌や醤油、そして土地の四季を映す日本酒など、豊かな発酵食が今も人々の暮らしに息づいています。荒々しく打ち寄せる外浦の波、内浦に広がる穏やかな入り江、寄り添うように広がる里山──多彩な自然が織りなす恵みを、人々は発酵という知恵で受け止め、独自の味わいへと磨き上げてきました。
この文化は、単なる保存の手法ではなく、自然とともに生きてきた証そのもの。厳しい冬を越すための工夫や、湿潤な夏に耐える知恵、米と塩に息づく微生物の力を活かしながら、能登の人々は「生きる術」を食の中に刻み込んできたのです。その一口一口には、土地の記憶や祈りまでもが宿っています。



